任務が終わった私はカフェのテラス席に掛けていた
「お待たせしました」と店員さんが運んできた細長いグラスにはミントとクリーム、オランジェがトッピングされたアイスチョコラータが入っている
トントン、と袋からストローを取り出し目の前のそれに付き差した
程よい口溶けで任務終わりで丁度疲れていた私には甘さが染み渡った

さて、私が何故ここで呆けているのか、というと私の恋人と待ち合わせをしているのである
恋人といっても手を繋ぐのと頬にキスまでくらいしかしていない…というよりも"されない"、が正しいのだけれど。

確かに彼と私は上司と部下で歳も7歳離れていて一緒のチームにいる。しかし私にスタンド能力といえるような物はなく、他人のスタンドは私には見えない。その分なのか私に直接のスタンド攻撃は効かないし小さい頃の貧乏生活からか足も速い
もしかしたらまだ完全に目覚めていない"無自覚のスタンド能力"なのかもしれない

相談できる相手がいればいいのだろうが私達が所属しているチームがチームなのでいくらメンバーを信頼していても伝えられないあたり物凄くこそばゆい
それに私は常に弱い所は見せないようなしている。任務中は勿論、彼と二人っきりだとしても

私は幼い頃から独りで散々な暮らしだった。それだからか記憶が曖昧で、どうしても詳しい事というのは思い出せない。毎日なんとか生き延びれればいいくらいのそんな生活だった。他の子供とも孤立しもちろん両親も居ない。
そんな私を見つけ、始めて何だかんだ言いながらも心から愛情を注いでくれたのがプロシュート…彼だった

そんな彼の事が私は好きで…でも、ここまでほとんど進展していないのを考えると彼が格好いいだけあって悲しくなってしまう。きっとあなたを失うことが怖いのだと思う
そのうちネガティヴな思考がぐるぐるまわってきて悲しくて悲しくて目の前が滲んできてしまった
寂しい気持ちを表に出さないように、必死で強がっていた、のに。

「何を泣いているんだ ?」
目の前には待っていたはずの愛しき人が心配そうに顔を覗き込んでいた
「プロシュート…」
彼に弱い所を見せたのは久し振りで。私は慌てて涙を拭った
「何ンで泣いていた?メローネに何かされそうになったのか?」
ううん、と首を振った。
何もされていないというと嘘になるけれど(今日も口説かれた上抱き付いて来ようとされたのを思い出してやはり苦手だ、と私は心の隅で思った)私が今落ち込んでいた事に彼は関係ない

「ねえプロシュート、私達付き合ってるのよね?」
「あぁ。もちろんそうだが?どうした?」
「あのね…」
恥ずかしいのもあって少し溜めてから、発する

「プロシュートはどうして私に手を出してくれないの?」

言葉を発した途端目の前の彼は先程テーブルに届き今正に口に含んでいた途中のコーヒーを吹き出し…噎せていた
「エホッ…ゲホッ…何ンでそんなことを聞くんだよッあと時と場所をちったァ考えろッつのッ」
私のハンカチを受け取り口を拭った彼は一気に酸素を吐き出したからか彼の陶器のような白い肌は赤くなっていっていた
「雑誌とかテレビドラマで恋人は海にいったり、デートしたり、夕日を見たり、キスや……その先の事もするって…」
と、先日見たラブコメディのキスシーンを思いだし私の顔も熱くなった

「普段からメディアッつーもんには影響されんなっつッてんだろ」
「けれどずっと手繋ぐまでで…それに兄ィは格好いいし…」
「お前は馬鹿か」
そう言われたと同時にぺしり、と後頭部にいい音が響いた
叩かれるのは慣れているけれどもやはりされるとなるとジーンと痛みが広がる

「お前を拾ってから食わせてくのに必死でそんな余裕なんてねーンだよ…
本当、責任取れッつの…」
そして私は気付く。彼が赤くなっていたのは単に酸素不足なんかじゃあなく、照れていたからだったということに。
当のプロシュートは「しかしあんなチビだったがンな事考えてたとはビビったッつーか成長して嬉しいッつーか…」とぼやいていた

「まぁいい。今日は戻ンぞ」
「えっ」
そういって彼は、私のチョコラータと彼のコーヒーの分の代金丁度を荒々しくテーブルへ置き、私の腕を引っ張った

そしてプロシュートの車に乗せられた私が向かった先は…アジトではなく海、だった
車を止め、外に出る。空はもう赤く染まっていて
そしてやはり海独特の匂いがする。
「…恋人ッつーのはこういうとこに夕日でも見に行くもんなんだろ?」
「…プロシュート、ありがとう」
夕日でお互いどんな顔をしていたかわからない。けれどとても幸せな顔をしていたと思う
、よォく目瞑っとけ」
一瞬しかしねーからな、と囁いた彼の唇は直ぐ様私の唇に重なっていた

初めてのキスはチョコラータとコーヒーの混ざったほろ苦い味だった


カフェモカ



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