「632146C、632146C」
「なにしてんだァそれ?」
「コマンド!決めたい必殺技がどーしても覚えれないの!」
空中のスティックコントローラーを動かしていた手を止め、は膨れた
「オレは覚えれるぜ〜
んなの1日で覚えれらァ!」
「じゃあ勉強も1日で覚えられるわけね」
ウッそれは…とオレは言葉に詰まった
名前を呼ばれる時っつーのは虹村ァだとか億泰だとかが多い(敬称やらさんやらくんやらを付けたときの事は省略して欲しい)そんな中オレの事を唯一"おっくん"という愛称で呼ぶのがこのなのである
じゃあそういう名前で呼ばれると云う事は長い間親しいのか、と云われると会ってから今日まで1年経たないか否かで無論そういう訳でもなくまた幼馴染みっつー訳じゃあない
幼馴染みだと俺達と同じクラスでダチの東方仗助とが幼馴染みでも仗助にくっついてオレにも絡んでくるというだけだ
最近はオレとの2人で毎週末ゲームセンターで格闘ゲームで対戦をする事もあり、今は正にそれの帰りだった
勿論最初は仗助もいたのだが使いすぎだとかで母親に怒られたらしく暫く2人でいる。正直言うとこれが楽しみだったりするのだ
"格ゲー"のコーナー辺りというのは煙草が吸える、がその為に行っているのでは無い。が楽しそうで、それにつられてつい行きたいと思ってしまうのだ
それに向こうがどう思っているかは兎も角、女子と2人っきりの時間というのも今までそういうことに無縁だったオレにとっちゃあ有り難い
最初は操作のやり方から覚え、順調に普通の必殺技類は覚えてきた。しかしそれよりコマンドの多い技はまだ覚えられない……というより動かすのが難しいらしい。しかも使っているキャラは初心者向けとはいえないガッツリ筋肉のついたまさに漢というようなキャラだ。このキャラでプレイしていてやり方や技をやっと覚えられたとしては記憶容量がパンパンなのだろう
「そんなに難しいならよォ、オレん家にアケコンあるけど練習すっかァ?
親いねェしいつでもどうぞッつー感じなんだけどよォ」
「えっほんと?いいの?」
に顔を覗き込まれる。
が、オレは目を反らし頷くすことしかできなかった
普通の男子高校生が女の子を家に誘うなんて事は好意がないとしない事だ。
事実オレはに対して好意を持っている
だがオレはには手を出せない。何故なら、彼女は仗助のモノだからだ
随分前に二人が手を繋いで帰っていたのを見てしまった
2人は幼馴染みで仗助は凄く、それこそオレなんかより全然モテる。二人の関係は確定的だろう
笑い掛けてくれる笑顔もボディータッチも全部オレのモノではなく、オレの親友のモノなのだ。たまに二人と別れると時々孤独感が残る
***
「おっくんの家ってこっちなのー?」
「おう、もうすぐだ」
オレ達は学校の話、昨日やっていたテレビの話などのすごくくだらない話をして家路を歩いた
家にを上がらせる前にある程度片付けてを呼んだ
行く途中に買っておいた飲み物を2つのコップにあけ、その1つをへ渡す。
もう既にゲームに没頭していたに調子を聞くがうーんという返事が返ってきた
「やっぱり出来ないなぁ」
「それはな、まずこーすんだろー?」
と後ろから回って越しにコントローラーを掴む。からはいい匂いがしてドキっとした。
刹那、おわっ、という言葉を残して俺達は後ろに倒れ込む。幸い後ろにはクッションがあり怪我は免れる
が、それに対しての何すんだよォ、というオレの声は、伝える相手――本人の声で掻き消された
「おっくんってさぁ、誰にでもこういう事すんの?」
「どういう事だァそりゃ」
「女の子を家に招いて後ろから抱き着くの」
「オメーくらいだけどよォ……その、嫌だったならスマン」
「ほんと?あのね、嫌っていうか他の子にもしてるなら嫌なだけなの……わかる?」
はこちらを向いて四つん這いになり、オレに一度キスをして見つめ合うとまたその雨を降らせた
「彼女に、してくれませんか」
格ゲーと君