今日の昼休みもいつも通り《いつもの場所》へ向かう
東方くんとはあの後も毎日話すようになり少しずつ打ち解け、彼は私の名前を親しみを込めて下の名前で呼ぶようになった。お陰で学校への重かった足取りも少し軽くなってきたのである
階段を上った先にはビニール袋を持った黒い人影が見える
先客――東方くんだ

「今日も買い食いなんて健康に悪いよ」
「会って一言目がそれッスかァ〜!?」

盛大に海外の舞台観客並のブーイングを私へぶつける東方くん。でも外国の血が混じっているからある意味本物なのかぁ
外人さんに混じって舞台へブーイングをぶつける東方くんの姿を想像してくすりと笑い、それを見た東方くんが何笑ってんスかァと更に膨れた

「東方くん今日は何買ったの?」
「今日はよォ〜焼きそばパンが無くてクリームメロンパンと高菜パンになっちまったんだよォ〜
けどクリームメロンパンは買えたしよかったぜェ〜クリームは甘さが控えめでこれがなかなかウマいんだよなァ〜
は今日は何持ってきたんだァ〜?」
私のお弁当を覗き込む東方くんに今日のメインとサイドのおかずを説明する
因みに今日のメインはミニハンバーグのサルサソース掛け、サイドメニューはトマトチーズオムレツ、ラタトゥイユ……と、いう具合に作り置きのものを詰めただけの大変シンプルなものであった

「つゥーかちゃん、そろそろオレの名前下の名前で呼んでくれよォ〜」

軽く下の名前で呼んで欲しいとねだる東方くん。しかし今まであまり男性に触れたことのなかった私としてはいきなり下の名前で呼ぶというのは抵抗感が拭えず恥ずかしい。私は少し考え込み溜めてからえぇと、と返事の音を出す

「じゃあ仗助くん、で」
「なんでそうなるんスかァ〜……」

東方くんのテンションが通り掛かった人でも分かる程に著しく下へ落ちた
まァいいんだけどよォ〜……と東方くんは呟く
いいのか悪いのかどちらなのだろう。やっぱり東方くんは少しズレている気がする。よくわからないなぁ

「あ、そうだ。いい忘れてたんだけどよォ〜ちゃんオレのケー番いる?」
「えっいいの?私携帯持ってないんだけど……」
「じゃあちゃあんと無くさないように持っとけよォ〜」
プリント用紙の端っこを破き、さらさらっとケータイの番号を書き写して私へ手渡した

「あ、ありがとう」
「おう、オレいつでも暇してっから気軽に電話くれよォ〜?」

私は東方くんの背中を見送ると先程貰った番号を繰り返し唱える
小さい頃から人への耐性がなかったこの私がこの人の事をもっと知りたい、素直にそう思ったのは間違いなく彼が初めてで私はただ海の波間にふわふわと浮かされているような不思議な気分になった


わからないから、知りたくなった


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