私は昔から引っ込み思案で話すのが苦手……というのもあるが集団行動があんまり得意じゃあなかった。どうしても一人になりたくていつも私の特等席である《屋上の入り口》で本を読みながら食事をしている
そこにある日突然来たのが東方仗助くん、彼だった
ルックスは良くても格好が時代の遅れたパーマリーゼントヘアーに着崩した学ランという典型的な不良のスタイルなのだ。しかも暴力沙汰を何度か起こしていると聞いている
勿論最初はあまり良い印象ではなかった訳で。
突然来た東方くんを避けるように私は端に寄り嵐が過ぎ去るのを待っていた……のだが、その願いも虚しく嵐は進行方向を此方にぐいっと変えたのだった
「あのよォー……えっと……もしもォーし?」
「……はい」
「隣、いいッスかァ?」
「…どうぞ」
断る理由も特に見当たらず、置いていた荷物を後ろへ動かして彼の座るスペースを確保した
「ありがとうございま…どっこいしょッと」
重そうな腰を座りづらい階段の、しかも私の隣の所にわざわざ声を上げてから下ろすと手提げのビニール袋から焼きそばパンとパックされたイチゴ牛乳を取り出し、パンの袋とストローの袋をベリっと破くと白と透明のそれを伸ばして銀色の部分へ突き刺した
先程まで舗装していたビニールのゴミはパンとイチゴ牛乳を入れていた白のビニール袋の中へ放られていた
東方くんが隣で焼きそばパンを頬張る中、私が本を読む。暫く会話も無く何分か過ぎた頃、東方くんが痺れを切らしたのか口火を切った
「上履きの色、オレと同じッつーコトはオレとタメッスかね?」
「えっと……そうだと思います」
「その、もしよければ名前、聞いていいッスか?」
「 です」
「さん、ッスかァー多分別のクラスッスよねェ。あ、オレは」「東方くんですよね?」
東方くんはなぜ知ってるのかと言わんばかりの驚いた顔を此方に向ける
それに対しわたしは本心のままを伝える
「だって東方くん、すごぉく有名・・・ですから」
「オレって有名なのかァ・・まァしょっちゅう放送の呼び出しかかるもンなァ・・」
と本人はそれなりには気付いてるようだった、がそれだけじゃないということには気付いていないようだ。なるほど、きっとこれがモテる男なのだろう
「さんのコトも図書室通った時とかに見かけるンで顔はわかってましたけどよォ、こーして話すのは初めてッスね」
こちらに向かって満面の笑みを浮かべる東方くん
それに対してわたしは引き釣ったような笑みしか返せないが、この時点で最初にわたしが思っていたような人ではなく実はいい人なのかな、と薄々感じていた
「でも東方くんがそんな私なんか見てたら他の女の子に何か言われるんじゃ…」
「なァ、もしかしてさんってよォ……でもとかだってとかみたいな言葉が口癖ッスか?」
あっ勝手にそう思っただけで違かったらすまねえッスと東方くんは付け加える
しかしそれは正しくて。ずばり、と言い当てられてしまったな、なんてわたしは思っていた
確かにそこまで意識はしていないけれど事実多いのだろう
「あ……バイト先の先輩にそれよく注意されます。意識はしてないないんですけど、」
「なァーるほどォ。まァこれはオレの個人的な考えなんだけども…でもとかだって、が口癖ッつーのはよォ、人生半分位は損してねェーかなァーって思うんスよォ
だっていい方向に考えンのと悪い方向に考えンのとで全然違げェし1かける1よりも1かける2ッつー方のが二倍でハッピーにならねェッスか?」
突然初対面なのに偉そうな事言って申し訳ねェッスと後から謝っている。東方くんの考え方は説明としては破綻していたが、何が言いたいかは解った。そしてその言葉がすごく胸の中に響いた
東方くんは一通り話終えると手を止めていた焼きそばパンに再びかぶりつく
それが感情の赴いたままに動く猫のようですこし口許が緩んだ
そして彼は昼休みになると私の元へ毎日来るようになり会話をしながらお昼を共にするようになった
初めは気にしないようにしていた私も隣の彼の事が気になっていて、これがきっと彼の魅力なのだろう
気にしないようにする程、気になった