私達が先程まで買い物をしていたお店から出ると外は雨がさああと降っていた。降り始めなのかまだ少し小降りで私達はその中を急いで駆け抜ける。私の体からは走る度、体に纏った洋服が雨水に当たってゆく音とアクセサリー同士のじゃらり、じゃらり、と揺れ、ぶつかり合った音がする
少し走ったけれど結局雨は強くなっていくばかりで一度適当なビルの下に入った
―、少し雨宿りでもしようか
と彼が尋ね、それに対し私はそうだねと答えた
いつもならばこの雨でも余裕で走って返るものを今日は先ほど買ったばかりの好きな作家の本の新刊を持っている上、傘が無いという状況だ。更に今日の天気を見ている限り強くなる予感がして少し出るのを躊躇った。
一面雨の匂いと雨が無機質なものに当たり返ってくる音が響く。数秒して地面は水飛沫で白く輝き、海辺独特の強い風でそれを一層煽らせた。
普段のこの通りならば隣からの車の走る音が響いているというのにそれを掻き消す勢いの大合唱で人の声も蛙の声も聞かせるつもりはないようで全てを打ち消している
降り注いだ雨水が排水溝に集まっていくのが見えた
***
「正直、は無防備すぎると思うんです」
と、彼は私の体をハンカチで拭きながら呟く
きっとシフォン素材のブラウスのインナーが透けている事を言っているのだろう
ビルはまぁ"よろしくない"泊まれる場所で、きっと彼はわかっていて彼なりに誘っていたのだろう。こういうときに自らの鈍感さに嫌気が差す
ちなみに本だが確認したところ無事濡れずに済み、あとは家に帰るまでの無事を祈るだけであった
「時間一杯まで乾かしておきますからほら、脱いで」
はいはい、脱ぎますよ、と私はだるそうに返答をし、フーゴに身を任せる
「……まさか、ぼくに服を脱がせろと云うんですか」
「勿論」
「この"お嬢様"め」
不満げ気だが何だかんだで脱がせてくれる。何だかんだいいながらも付き合ってくれる、そんな所が素敵なのだ
そして脱がし終わると彼にしては珍しくにやりと不敵な笑みを浮かべた
「ぼくに頼むとこうなると解っている癖に。
全く、馬鹿なお嬢様ですね」
彼の鋭くそれでいてとろんと垂れた目は私の瞳を吸い込み離さない
甘くて、苦しくてわたしは必死で藻掻いた
けれどもうとっくに手遅れで
とうにわたしはあなたに溺れている
溺れる雨